「たんのう」の原義は足りているということだとされています。つまり、満足したという心の状態です。
苦しい状況の中でたんのうするとは、単に歯を食いしばって我慢したり、泣く泣く辛抱することではありません。これで結構、ありがたいと前向きに受け止め、心を励まして踏ん張ることです。また、そこに運命の切り換わる道が開けてくるのです。従って、たんのうはあきらめの心情ではありません。悪い状態を無気力に受容することでもありません。
「たんのうは前生いんねんのさんげ」とのお言葉にうかがえるように、成ってきた事柄を、成るべくして成ったものと受け止め、その因ってくるところを思案し、芳しくない運命が切り換わるよう、理づくり、努力することを決意することです。
『広辞苑』の編者である新村出博士によると、「たんのう」の原義は「足りている」ことで、「足りぬ」「足んぬ」と変化したもの、すなわち満足したという心の状態を指すということです。
道友社刊『ようぼくハンドブック』より